B 女子就労の現状 なぜ、看護学校(医療の学校)か?

その1 職業訓練の話

日本では国や都道府県に職業安定行政(ハローワークのことです)と言って失業者に就業のあっせん、職業訓練をするしくみがあります。
特に、自分が稼がないと生活できない特技・資格のない母親ひとり親が定職につくためにハローワークにいくと、就業のための職業訓練を受けるように指示されます。訓練の間生活費がもらえます。
ところが、職業訓練を受けても就業先がなかったり、仕事内容が厳しかったり、パートタイマーよりも収入が下がることさえあります。
人によってはそれを知りながら生活保護を受けたくないので生活費をもらうために訓練を受けている人もいるくらいです。

ただ、ここで私は職業安定行政にかかわっている人たちを非難したくないのです。
私も税金で給料をもらっていた身として手かせ足かせをされて無念の思いで仕事をしてきたことがありますから。
むしろ、限界の中で一生懸命人のために仕事をしている人たちだと思います。

問題があるのはしくみなのです。
日本の国は大人がキャリアアップするのは本人責任だという立場をとっています。
学校に行って資格を取ろうとしても、子どもには学資が簡単に借りられるようになっていても、大人には簡単に学資が手に入らないようなしくみになっています。
貧乏なオトナにとってはいろいろ知恵(悪知恵?)を巡らさないと学資(修学中の生活費も含めて)は手に入りません。
合衆国は学歴がそのまま能力を意味する国ですが、学資ローンは無担保無条件で借りることができます。(そのかわり学資ローンだけは自己破産できないようです)
本人責任のかわりに自分の才覚で生きる機会を保証しているわけです。

そこで、「なぜ、看護学校(医療の学校)か?」ということですが。
1.医療は資格制度が収入を保証してくれる。(日本の資格制度では唯一本人の才能にかかわりなくきまった収入が手に入る。使った費用のもとが取れる。)

2.たいていの人にとって、きちんとしたトレーニングをすれば、努力とまじめさだけで資格がとれます。(入学試験も含めて)

3.日本の社会ではたいていの職場で本人の能力・資格よりも職場・上司に対する忠誠心が一番評価されますが、そのため、サービス残業が普通ですが、医療の現場は資格で働くので母親ひとり親にとってはサービス残業が求められにくい職場です。医療の現場の90%程度を占める看護職は女子の職場で男子中心とは違った待遇があります。

4.看護師は売り手市場です。自分の職場や条件を選べます。職場の労働条件がひどければ他の職場に移ることが簡単にできます。

5.特に看護学校は学費が安いところも多く、学資を手に入れやすい条件があります。(別のところでくわしく説明)

その2 医療の資格の話
なぜ、看護学校か?医療の資格について話をします。
医療の資格を広くとらえると「医療類似行為」と「医療行為」をする資格があります。

「医療類似行為」とはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師の資格を指します。(トレーナーや整体師は日本では公式な資格制度はありません)

それに対し「医療行為」とは医師(歯科医師を含む)、薬剤師と医師の指示により医療を行う資格(看護師、理学・作業療法士など、書き切れないので略、最近はco-medicalとも呼ぶ)を指します。

「医業類似行為」の資格者は独立開業することができます。「医療行為」の資格者は医師、薬剤師以外は法律が許す範囲でしか独立開業をすることができません。(実際には医師、歯科医師の指示がないと仕事ができないと考えていいです)

そうすると、資格のとりやすい「医療類似行為」の資格をとった方が得なような気がしますが、自分で独立開業しなければあまりメリットはありません。
自分で開業するということは自分が経営者になるわけです。開業資金が必要ですし、経営の能力や人あしらいができない人にはできません。

ここからは「医療行為の資格者(ここからは医療従事者と呼ぶことにします)」の話にしぼります。
医師、薬剤師を除いた、医療従事者の全体数のうち90%ぐらいが看護師(看護職)です。現在、国(正しくは健康保険制度)が病院・診療所で定数の基準を作っているのが看護師、理学・作業療法士、言語聴覚士などです。
特に、看護師については最も在籍数の審査がきびしく、定数が欠けると病院の収入が減るしくみになっています。そのため病院・医院はどこでも年中看護師を募集しています。

ですから、まず看護師資格があれば職にあぶれることはありません。
特に、引っ越や一時退職をしてもすぐに仕事が見つかります。
残念ながら看護師以外の医療従事者(医療類似行為資格者も含めて)はその地域で不足していないかぎり、確実に就業、開業することができません。

その3 女子有利の世界
なぜ、「看護学校(医療の学校)」勧めるかという理由です。

医療の仕事をしたいが、看護師で働くことを希望しない人もたくさんいます。でも、残念ながら資金のない人は看護学校以外での修学が難しいのが実情です。なんと言っても医療従事者の大多数が看護師であるからです。

まず、医療の世界は90%ぐらいが看護職で、看護職の95%ぐらいが女子です。ですから、圧倒的に女子の世界です。

看護職は男子にとってはハードルが高い世界です。看護師養成学校では受験資格が女子だけ、推薦入試が女子だけだったり、共学校でも私立では非公開ですがたいてい男子の定員枠があります。
(医学部の女子差別と騒いでいますが、看護師養成の世界はそれどころではない圧倒的な男子差別の世界です。でも、それは病院実習で男子の実習割当に困っているからだとも聞いています。看護師養成カリキュラムには「周産期医療(産科)」がありますが、男子看護学生は産室にさえ入れてもらえないという話を聞いたこともあります。就業でも精神科を除くと男子の就業は条件が悪くなります。)

看護師養成以外の医療の学校では病院の奨学金制度が少ない(というかほとんど期待できない)のです。
また、公的援助も少ないです。
ごめんなさい(特に男子のみなさん)、私の力では看護学校以外の学校の受験者に十分な学資を作ってもらう方法がないのです。

看護学校が授業料を安くできるのは親病院が学校の建物を作り(提供し)、経費補助しているからです。
(ある看護学校の担当者の話では学校運営費以外に毎年看護学生個人ごとに親病院が50万円負担していると聞きました。当然、奨学金以外でですよ。)
人数の関係で医療機関では看護師以外の医療従事者を自前で養成するメリットはありません。看護学校以外の学校では授業料だけでも毎年100万円ぐらいになります。自己資金のない人に進学は無理だと思います。

だいぶ前の話になりますが、大規模な医療チェーン(病院・診療所・介護施設が30近くある医療法人です。日本では大規模医療法人といってもたいてい10施設以下です。)では、看護師以外でも奨学生制度があるという話を聞きましたが、その後の事情は聞いていません。

言ってみれば看護師の女子優遇は女子差別の裏側としてあるわけです。でも、自分が生き残るためにこの特典を使いましょう。

ただし、女子の職場だからといってもすべてが母親の都合のいいほうにいくわけでもありません。
実際、職場では未婚者と母親の対立もあったりします。
それでも一般企業ではごくまれな恵まれた所が母親としての事情を考えてくれるだけですが、どの医療機関でも看護師の定数が足りなくて困っているかぎり、働きやすい現場を作らなければ人が集まらないという現状があります。
そして資格さえあれば自分の都合で職場をえらぶことができます。病院から奨学金を受ける人は金額だけではなく子どもが育てやすい職場かどうか考えてみるといいでしょう。

その4 医療は日本で唯一の労働市場がある分野です 資格が自分を守ってくれます
「労働市場」と呼ばれるものがあります。

世界の標準では、労働市場では資格や能力にしたがって仕事を選び、雇われ、好待遇を求めて転職するのが普通です。
それに対して日本ではほとんどの分野では自分の能力・資格よりも、第一に会社・職場への忠誠で評価されます。
その結果たいていは自分の意思に反した働き方が強いられています。
これでは労働市場と呼ぶことはできません。
それでも唯一日本で労働市場が成り立っている分野が医療です。言い換えれば唯一資格が自分を守ってくれる分野だということです。

*いつでも、求人があります
たいていの医療機関は看護師が定数に足りていません。いつでも、募集広告がでている状態です。都合で引っ越しが必要になってもすぐに職場が見つかります。特に高給を求めなければ自分の条件に応じた職場を選べます。
(ただし、卒業後初めての仕事は病棟勤務を経験した方がいいでしょう。病院の奨学生の場合縛りもあります。)

ついでに、
希望すれば、たいていほとんどの場合無試験に近い条件で公務員になれます
公立や国立病院で採用されれば公務員です。
普通、公務員は試験に通らなければ採用されません。
看護師の採用の場合も試験はあると思いますが、全般に人手不足ですから資格さえ持っていれば採用しないわけにはいきません。

その5 敗者復活できます この国では社会のレールから外れると敗者になります
わたしが手助け事業の中心にしているのは「母親・ひとり親」です。(これは母親・ひとり親以外の学資の用意がむずかしいからで、決してそれ以外の人を手助けしたくないわけではありません)

日本では社会の決まったレールの上を走らないといろいろな所で都合が悪いようにできています。
社会制度に標準があって、そのわくからはみでると非常に不利になります。問題を取り上げると長くなるのでここでは取り上げません。

何を言いたいかというと、(実質一人親同然の)母親とひとり親は、その立場にあるだけで敗者の扱いを受けるということです。

実例です。
四年制大学卒業、就職内定直後に妊娠がわかる。会社としては人物を高く評価したので、そのまま雇いつづけたが、出産後仕事を続けることができずに退職、その後離婚、パートタイマーとして生活。

これは珍しい例でもないと思いますが、この国では能力・やる気があっても社会のレールから外れると敗者になってしまいます。
その理由は他の所でも書きましたが、この国に「労働市場」がないからです。簡単に言えば「能力・やる気」よりも、会社・組織に対する「忠誠心」が評価されると言うことです。だから、就職しても生え抜きでない者は保護されません。

ですから、外国に比べれば決して労働市場と言い切れない労働市場ですが、それでも資格で採用され、それなりの収入があるという点で、この国のたった一つの労働市場である医療の分野には敗者復活の機会があります。

医療分野の資格を取るとしても、一度敗者になった人にとっては、医療の四年制大学の1000万円に及ぶ学費・生活費は払えないと思います。
看護学校以外の医療の専門学校では病院奨学金はほとんど期待できないので、3年制であれば少なくとも学費400万円以上を調達しなければなりません。その上確実に職場を見つけることができる保証がありません。

他に保育・介護という職もあります(国費での学費補助も始まっています)が、業界のピンハネ構造、経営者の不見識・不勉強(気合いや奉仕の心を言うだけで、職場の問題を改善する気も能力も全くない、人材を企業の財産だとも思っていない)が続く限り職場は弱っていくばかりでしょう。
(ここにも日本の幹部がマネージメント能力を持っていないという現状があるのですが。だから、本当の意味での「高等教育」は必要です)

その6 虐待に依存する親・大人 危機の子どもを救うために必要なのは母親ひとり親の自立から

新聞によると(厚生労働省の発表では)
2020年5/18現在、全国で
「内定取り消し」と「解雇・雇い止め」の合計が5000人を越えています。
(派遣切りのために仕事だけではなく住むところまで失った人もいます)

これからも増えていくでしょう。
会社も生き残るためですから責めることもできません。

これまで、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)の流行という警告があったのにもかかわらず
何も考えずに拡大されてきたグローバリズムは
とうとう新コロナウイルスの大流行を起こしてしまいました。
(SARSもMERSもコロナウイルスが引き起こすものです)

今までにないほど世界が近くなり、強く結び付いた時代
これから先、何度も新しい感染症の気まぐれな流行の波が続くでしょう。
かつて、モンゴル帝国のユーラシア・グローバリズムがペストを呼び寄せたように
現在のグローバリズムもコロナウイルスを呼び寄せてしまいました。

まだ
新コロナウイルス後の新しい世界環境がどうなるのか全くわかりませんが
間違いなくこれまでとは違ったものとなるでしょう。

人の命、健康を対価として
感染症での犠牲を覚悟の上でグローバリズムを続けるのか
それとも、他国とのかかわりを減らし自国安全主義を取っていくのか
全く予想がつきません。

命の安全と経済とのバランスをどう取るか。
きっと
国・国民の安全にかかわることとなれば
日本では想像も出来ない政策をとる国が出るでしょう。

間違いないのは
今回のパンデミックが終わった後で
多くの国では政治・経済で大きく考え方が変わるという事です。

前置きは長くなりましたが
今の流れを見ると日本では
パートタイマー・非正規雇用者にとっては
これからの時代は間違いなく
雇い続けてもらえる保障はなくなるということです。

わずか2019年末までは人材不足で雇われる側が有利といわれていましたが
それでも非正規雇用者は厳しい生活を強いられてきました。

これから先、今以上に
グローバリズムと一緒に訪れる
好景気(人材不足)と今回のような危機が繰り返されるならば
会社も政府も非正規雇用者の犠牲でバランスを取り続けることでしょう。

今、新コロナウイルス流行の中で
「外国人技能実習生」の契約打ち切りが進んでいるようですが
彼らの来日ライセンス条件からすると再雇用には無理があるでしょう
(本国を出て働いている1000万人にもおよぶインド人労働者が一斉に帰国しているという話もあります)

日本の国が政策として進め
企業も「金の卵(昔の集団就職のようです)」のように求めた人材でさえ
放り捨てられてしまうようです。
(日本の信用を考えるとなんとも情けないことですが)

こんな時代には
本当にわが身でわが子を抱えて生きていかなければならない
母親ひとり親のあなた
時代の流れの中で親子ともども厳しい生活に陥らないために
自分の力で生きていくために学び
どんな時でも自立できる資格を手に入れてください。

思い立ったときはどうぞ連絡してください。
まず、相談から。
力になります。

その7 パンデミック後 パートタイマーの雇用はどうなるか 母親ひとり親が子どもと生き抜くためには

今、新コロナウイルスで仕事がなくなっています。
母親ひとり親のあなたは自分と子どものために将来の不安を感じているところだと思います。

不安を乗り越えるためにまず生活を安定させることができる資格を目指しませんか。

わたしはこれから今回のようなパンデミックは当たり前のように起きるようになると予測します。
新感染症の流行は人間が生態系を乱してしまったことから起きています。
それがグローバリズムの流れの中であっと言う間に世界に広がってしまいます。

これからは何年かおきに起きると考えられます。
(ここ20年で新型ウイルスの感染が4回起っています
SARS、MARS、新型インフルエンザ、新コロナウイルス
今回はその流れがとうとう大流行になったのです)

今回の新コロナウイルスでの休業・営業短縮のためにパートタイマー・派遣労働者の雇い止め・解雇が社会問題になっています。

これまでも
特別な資格・能力がなかった母親ひとり親は
仕事があっても十分な収入がない上に
仕事すらいつもあるわけではなかった。
(以前の人手不足といっても安く雇える人の不足です
人手不足と言いながらも同時に人員整理が行われていました)

その上
今回のようなことがあると真っ先に解雇される。
これではこどもの将来のための蓄えどころか
子どもに最低限のことさえやってやれなくなります。

今、新コロナ自粛の中で
母親ひとり親のあなたは自分と子どもの将来が全く見えない状態だと思います。
今の不安を乗り越えるために
十分な収入があり
どんなときでも仕事がある
どこへ行っても働くことができる

資格を目指しませんか!

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