07 医療は特別な仕事だと二の足をふむ人も多いと思います

7 医療は特別な仕事だと二の足をふむ人も多いと思います

医療の仕事は特別な仕事ではありません。ただし、専門的な倫理・訓練を必要とする職業です。もともと、どんな仕事でもいいかげんでいい仕事などありません。もし、仕事に難易・苦楽があると決めつけているなら、あなたの仕事への取り組みの姿勢に問題があると思います。どんな仕事でも誠実にやろうとするかぎりたやすいものはありません。
確かに医療の仕事は厳しい仕事です。でも、安い時給で長い時間働いてやっとのことで暮らしを成り立たせているなら、半分の時間で二倍の収入が手に入ると割り切ってしまうのです。
嫌なことをしろとは言いませんが、嫌でなければやればいいのです。仕事とはそんなものです。

※「医学的侵襲」という考え方 なぜ医療には資格がいるのか 専門的な倫理・訓練とはどういうことかでは、なぜ医療には資格がいるのでしょうか。

聞かれなくても「高度な専門の仕事だから、むずかしい訓練を受けた証拠として資格が認められるからだ。」と普通は考えると思います。まあ、当然の見方です。しかし、現代医療ではもっと根本的な考え方をするようになってきています。残念ながらいまだに前世紀的な考え方をする人も多いのですが。
それは「医療的侵襲」という考え方です。一言で言えば「良いことであっても無条件にやってはいけない」ということです。普通、人に薬をのませたり刃物で体を切ることは傷害罪という犯罪になります。刑法に詳しい人なら相手を押しても髪の毛をつかんでも犯罪になることを知っているでしょう。ところが、医療の世界ではけがや病を治すという正しい目的であれば、普通は犯罪になることでも法律上の責任を問われないことになっています。これは正しくないが免責されているという考え方です。「人を助けているのに何で」と思う人もいると思いますが、理論的には近代的法律ができたときからずっとそうだったんです。(この考え方は実は学校教育でも同じことのはずですが。)
ここ20年来、医療の世界では人助けだから絶対善であるという考え方が少しづつ変わってきています。そうすると人助けでも守らなければならない一線は何かということになります。議論するとなかなかむずかしいのですが、その最低の条件として医療者には専門的な倫理・訓練が必要であるということになります。
また、実際の職業意識として大事なのは、良いことだから許されるという甘えを捨てることで、現実の悪を意識しながら善を求めるといった姿勢にあると思います。これは職業すべてに共通することかもしれませんが。

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