厚生労働省の看護師養成プログラムが専門教育であり技能教育であることは公立高校の進路指導ではほとんど理解されていません。(私学についてはよくわからないのですが、学校によって大分差があるのではないかと想像します。)生徒の方も仕事については知ることができた断片や自分の願望で考えているだけだと思います。特に大学看護学科を目指す者に対しては高校はほとんど大学任せです。その結果、ミスマッチが起こっています。
笑い話のような話ですが、進学校の出身者が病院実習にいって初めて病人の世話をすることがどんなことか知り、(下の世話もする)退学してしまったという話も聞きました。わたしも進路指導をする中で、看護体験に行った生徒がモニターで開腹手術を見て卒倒して進路を変えたという経験があります。幸いに受験前にわかってよかったのですが。このようなことはまあ、本人が世間知らずと言われてもしょうがない範囲です。
しかし、医療の仕事は他の仕事とは根本的に違うところがあります。それは直接他人の命に関わるということです。医療自体が人間の体や心を傷つけたり影響を与える可能性を持つ行いであることです。他の仕事でも人の命に関わることがないわけではありませんが、大きく違うことは、それを仕事にしているということです。そこから考えると、多くの場合あまりにも無造作に医療の職を選んでいる気がします。医師でさえ本人が医療にどう関わりたいかよりも、成績が良ければ医師を目指せみたいな乗りがあるように思います。
でも、別に難しい深刻な話をしたいわけではありません。知った上で判断すればいいのです。少なくとも自分の子どもや家族のために真剣になれる人は十分に医療を仕事に選んでいいと思います。そこで「看護師準備教育」という考え方があります。(わたしは「医療・介護従事者準備教育」と一本化するのがよいと思っています。残念ながらまだ高校の進路指導ではまだはっきりと標準ができていません。だって、まだその考え方が一般化されていませんから。)実は10年ほど前に「プレナーシング(pre-nursing)」という言い方が使われ始め、定着するかと思っていました。わたしもその呼び方を使っていました。ところが、いつの間にか使われなくなっていました。調べたところ英文の意味と日本での意味が全く違っていました。合衆国の標準では入学後に看護師専門教育を受けるための基礎課程のことを指しているようです。「pre-nursing is an educational track which is designed to prepare someone for enrollment in a nursing program.」と説明してあります。
それはさておき、公立高校では看護師準備教育は意識されずに、結果的に小論文の練習での医事知識が代わりになっているという現状があります。進路指導ではなく受験対策という形で行っているわけです。私が現役だったころ私の責任でトレーニングした生徒たちには「看護師準備教育」にそったトレーニングをしました。受験でも成果ははっきりでました。全員合格ですから。(残念ながら事情があってパーフェクトではありませんが)
内容については、これまで
・職業としての医療の特殊性
・医療の資格制度
・看護師の仕事
・医療に従事するための考え方についての議論
・学校入学後のトレーニングの概要 を取り上げています
さらに、日頃の学習トレーニングの中でも必要があれば取り上げます。