「展開の基礎」編は本文の要約から文章の基本構成をつくり出す訓練をするものです。
すなわち
「主題の定義」から「賛・否」の意見提示、「結論」へと導く
そのための骨格をつくる段取りを示すものです。
いよいよ、これまでの訓練を元に論旨を展開していきます。
これまで実際に出題された論題をつかって
定型の作文をつくっていく最初の部分をつくっていきます。
最初から全体の構成を行うのではなく
文章の「提示部」に当たる部分をつくる練習から始めます。
その上で追々全体の構成に進みます。
まず、「出題」から「主題」の「定義」を行い
それに対する「賛成」と「反対」の「一般例」を展開します。
注意すべきことは
ここでは絶対に「自分の考え(意見)」を書いてはいけません。
あくまでも客観的に議論を行うための前提としての一般論の提示でなくてはなりません。
徹底してその練習をしましょう。
それができて初めて次の段階として
自分の論旨を展開することができます。
詳しくはトレーニングの順を追うことで理解できると思います。
展開の基礎 解答例
展開の基礎1 本文からそのまま抜き出す(その一)
①患者が目的を選んで、医師が手段を決定する。これがインフォームド・コンセントである。
②現代において幸せを再生産しようと思うと、手づくりの文化の良さにもう一度返る必要がある。
③グルメがブームになる時代とは、自分の舌が信頼されなくなり頭が舌に取って代わる時代のことなのかもしれない。
展開の基礎2 本文からそのまま抜き出す(その二)
④ほんとうのところがよくわからぬ他人の心事を、自分の立場から推測して理解するのも、一種のりっぱな翻訳である。
⑤ことばの交際は、ふたつの島がいっしょになってしまうことではなく、離れたままで、その間に連絡のルートができることである。
⑥人間には、動物行動学でいうような育児本能はないのだと考えたほうがよい、あるのは育児衝動だけなのである。
⑦大人とは、世の中になれてしまって、わかっていないということを忘れてしまっているひとたちのことだ
展開の基礎3 本文からそのまま抜き出す(その三)
⑧私たちはいわば「飢えのエリー卜」の子孫なのです
⑨言葉をつくして、自分の考えを相手に理解させ、相手からも十分なな言葉によって情報を得る。それが日本以外の、世界のルールである。
⑩塩の道は、民族の文化を彩り、綾なしてきたもっとも古い、そしてもっとも重要な道の一つであったといえよう。
⑪個々の心情を微妙に伝える顔の表現力にくらべれば、言葉はまことに無力である。
展開の基礎4 本文を整理してまとめる(その一)
①人間は… 本能的に自分の持っているイメージに合わせて対象を見ようとし、自分のイメージに合わない物事を無視したり、切り捨てたりする。
②同じ人間でも… 読む度に、違った解釈になることを避けることができない。そのうちのひとつだけの解釈が正しいといった考え方の上には、言語表現は立脚していない。
③私たちは… 他者の生命を(自分の生命を)維持するために食いつぶすという生死の交錯の大きな流れに目を向けることもなく、日々精力的に記号や情報を食べ続けている。
展開の基礎5 本文を整理してまとめる(その二)
④普通、翻訳と言えば… 外国語の自国語訳だけのことを意味する。しかし、ほんとうのところがよくわからぬ他人の心事を、自分の立場から推測して理解するのも、一種のりっぱな翻訳である。
⑤サルの仲間は… 環境に対する柔軟性において進化してきた。外界についての知識を得ることで的確に判断できることが生存のために不可欠なのである。
⑥本当の記憶力とは、記憶を編集し、整理することによって新しい意味を立ち上げる能力を指す。「整理」されてはじめて立ち上がりうる「意味」は、私たちが世界の中で生きていくうえで大切な役割を果たしています。
展開の基礎6 本文を整理してまとめる(その三)
⑦日本以外の文化圏では、人問同士の関係において、「十分な説明」が重要視されている。言葉をつくして、自分の考えを相手に理解させ、相手からも十分なな言葉によって情報を得る。それが日本以外の、世界のルールである。
⑧敬語を使う場合に敬意を表さずに単に言語表現に敬語を使うことがある。これはただちに敬語を使ったことにはならない。敬語の使い方はかなり複雑だし、多くの問題を含んでいる。
⑨原生林とは、いままでまったく人手が入らない森林をいう。わが国には本当の意味の原生林はほとんどない。しかし、それに近いものはまだ残されている。われわれは、将来の人々のためにもこうした森林を残していかなければならない。
展開の基礎7 本文を整理してまとめる(その四)
⑩「いい加減」というのは字義どおりに解すれば、よい加減という意味である。しかし、この言葉はけっして字義どおりの意味で使われていない。
⑪自由というものを… 何か価値あるものとして考える場合、欲望の拘束を断ち切って理性的な行為をするとき、はじめて自由であることになる。
⑫気持ちよくコミュニケーションを取るためのルールは、… 相手のことばをきちんと受け止め、相手のことを考えてことばを返すことだ。
展開の基礎8 本文を整理してまとめる(その五)
⑬里山を守ることはよいことだという一種の「神話」になりつつあるが… 里山とは自然の恵みを人が収奪するしくみと言い換えることもできる。マツタケは、人が自然を収奪した歴史の象徴といってもよい。
⑭「生活知」とは… 私たちがこの世界の中に個として投げ出され、生き延びていく際に獲得する一人称の知だということができます。
⑮親疎関係が… 使わせたり使わせなかったりするのが敬語である。
展開の基礎9 本文を整理してまとめる(その六)
⑯かつては、「環境は無限」と考えられていた。… しかし、環境が無限でないことを、さまざまな公害によって学んできた。二一世紀は、環境問題の危機に直面する時代となるだろう。
⑰科学技術の進歩がめぎましい時代では… それらを使う立場にある人間の知恵をこれまで以上に磨き高めていかなければならない。さもないと生まれてきたものが生かしきれないことになる。
⑱友情とは… 親しい者が表面だけでの理解ではなく、お互いが違ったものであることを、はっきり知ることだ。それは驚きであり、悲しみである。
展開の基礎⒑ 本文を整理してまとめる(その七)
⑲ボランティアの不思議な魅力とは… 助けるつもりが助けられ、個人の力の限界を越えた意外な展開がもたらす豊かな結果にある。
⑳私たちの日常的な推論は領域ごとの知識を使っておこなうため… 領域が違うと形式上まったく異なる推論をすることがよくある。訓練したとしても、なかなか他の領域でそれが使えるようにはならない。
展開の基礎⒒ 主題をとらえる(練習問題 その一)
①芸術家に必要なのは自然から生命を掘り出すことで、芸術家には浅薄な独創性は必要ではない。
②サケにとって秋は生と死が交差する季節である。生命の凄絶さのある季節だから秋は美しい。
③かけがえのない友人のイメージは友人に関する体験が脳の中で整理されて生み出される。生涯の友は、「脳」整理を通してこそ生み出される。
展開の基礎⒓ 主題をとらえる(練習問題 その二)
④人は人生の意味や死への恐怖などが、自覚できていないから、そこから逃げようと走っている。だから、死を知ることで死への恐怖はなくなる。
⑤躾には、強制と罰とが伴う。そこで、躾の義務を合理的に説明する道徳教育が必要になる。しかし、躾を可能にさせるものは社会の圧力である。
⑥日本では控え目な表現が好まれるが、外国では率直な表現が好まれるので、日本人の過剰な他者への意識は却って皮肉とか優柔不断と取られ易い。
展開の基礎⒔ 主題をとらえる(練習問題 その三)
⑦どのような表現形式であろうと、他人との関係を前提としているので、個人に所属しているように見える新しい表現の形式が生まれたとしても、これは自己表現ではあっても、けっして純粋な内面の表現などではない。
⑧古典でもまずそれをみずから読むという実行が基本であるが、実行よりは観念が、経験よりは知識が重んじられすぎ、読むことがなされてない。
展開の基礎⒖ 実際の論題で論を立てる(その一)
①(主題の定義)私は少子化とは社会の危機と考える。
(賛)このまま子どもの数が減っていけば社会そのものが成り立っていかなくなる。あらゆる努力が必要だ。
(反)少子化はわれわれが生活のゆたかさや快適さを求めた結果起こったことである。人口が減ると困るといった都合のことだけを考えるのではなく。自分たちが作った現実と向き合うべきだ。
②(主題の定義)私は女性の社会進出は最重要課題だと考える。
(賛)十分な収入がない者には自分の自由がない。そして、現在の女子労働者は十分な収入を得ていない。
(反)男女には性別の役割分担があり、社会進出よりも重要であるという意見も根強い
③(主題の定義)私は自分の安全を守るのは本人の責任であると考える。
(賛)歩きスマホで自分や他人に危害を与えていることがよくあり、これは無責任な行いである。
(反)今のせわしない時代、通行人にとってスマホがカーナビゲーションと同じ働きをしていることが多く、必要悪である。
展開の基礎⒗ 実際の論題で論を立てる(その二)
④(主題の定義)私は見かけの話をするとき、「外見は最大のうそかもしれない」という意味の言葉を思い出すのである。
(賛)シェークスピアの「ヴェニスの商人」に「外観と言う者はいちばんひどい偽りかも知れない。世間というものはいつも虚飾に欺かれる。」というセリフがある。
(反)外見は他人を判断する時の最大の基準である。われわれはすべての人間の心を知ることはできない。人間はやはり自分がどう見えるかについては責任を持たなければならない。
⑤(主題の定義)私は食事は人間にとって最も大事な習慣であると考える。
(賛)食は単なる栄養補給ではなく、人間の生き方や考え方を作るものである。
(反)現代社会では人間の孤立化が進み、食事が単なる食うことになってしまうことはやむをえないことである。
展開の基礎⒘ 例文から結論を作る(その一)
①せわしない今の時代、人々にとってスマホは重要な道具であり、歩きスマホもやむを得ないときもある。ただし、周りに危害を与えるような使い方は論外である。スマホを使っている人は自分の安全も他人の安全も守る義務がある。
展開の基礎⒙ 例文から結論を作る(その二)
②人を見かけだけではなく、心まで知って評価するのは理想である。しかし、すべての人に対してそうすることはできない。他人に誤解されたくなければ、自分がどう見えるかについても責任を持たなければならない。
③現代社会では食事が単なる食うことになってしまうことはしかたがないが、時には自分の心をゆたかにしてくれるような食事の機会を持とう。
展開の基礎⒛ 要約の技術(その二)
[100字要約]
絵に描いた餅とは、見かけだけで現実的価値を持たないという意味だが、ヴィジョンのことでもある。ヴィジョンは時として現物より価値をもつ。日本人はヴィジョンを過小評価しがちだが、今後はその価値を見直すべきだ。
[50字要約]
絵に描いた餅とはヴィジョンでもある。それを過小評価してきた我々は、今後その価値を見直すべきだ。
[20字要約]
我々はヴィジョンの価値を見直すべきだ。