計算の基礎Ⅰ

§1 分数には二つの種類がある 混乱を招く「割合分数」と「量分数」の違い

「割合分数」と「量分数」
分数には直接足すことができるものとできないものがあります。
「量分数」は互いをそのまま足すことができます。
それに対して
「割合分数」はそのまま互いの量を足すのではなく割合を足すことになります。

次の例を考えてみましょう。
A君は家で犬1頭と猫1匹と住んでいます。猫の割合は1/2です。
Bさんは家で犬1頭と猫2匹と住んでいます。猫の割合は2/3です。
A君はBさんと一緒に住むことにしました。
そうすると
「猫の割合は 1/2+2/3 だから 3/5になるね。」
とBさんは言いました。
この計算は正しいでしょうか?

「量分数」は実際の大きさ(量)を表したものです。
ですから
具体的な量と結びついています。
(例)  1/2m + 2/5m = 5/10m + 4/10m = 9/10m
(50cm + 40cm = 90cm)
この場合m(メートル)が単位になっていますから分数は割合ではなく
1mに対しての長さを示しています。
実際の量を示している分数です。
長さをcmで示せば1/2mは50cm、2/5mは40cm、足せば90cmとまります。
(ここでの通分は長さの単位を合わせるためのものです)

それに対して「割合分数」は
全体のうちの「割合」を示すものです。
単位なしで使われる分数は全体を1としたときの割合を示しています。

1/2だったら全体を1としたときの半分を
1/3だったら全体を1としたときの1/3といったふうにです。
ですから
分数が示しているのはその全体の量のうちのいくつかということです。
計算するもの同士それぞれを1とした上で計算しないと
全く違った条件なのに計算することになります。
(それぞれの全体の大きさをそろえる、それが「通分」になります)

そうすると
猫の割合は1/2+2/3= 3/6+4/6= 7/6にしなければなりません。

学校の分数の計算問題ではたいてい全体を1に固定した「割合分数」で計算することになります。
時々、単位を表すものとして「量分数」が使われることがあります。
このことに気づかなければBさんのように足すことができないものを足すことになります。

残念ながら教科制ではない小学校では教員にきちんと教科の基礎訓練をすることさえも至難の業です。
大事なことでも教員自体も十分に分かりきって教えているわけではありません。
(基本教科だけでも、他に国語があり、その上英語までも教えなくてはならないことになったのですから)

§2 すべての計算の基本 交換法則・結合法則・分配法則

算数と数学の根本的な違いは
数を経験で扱うのか法則として扱うのかということです。
結果が合えば、実際に使えればいいのか
法則として認めた上で使うのかということです。
(だから、文字式=一般式で表します)
わたしは算数であっても数学につながる訓練が必要と考えています。

小学校ではこれらを法則としてではなく計算方法として教えています。
だから
多くの小学校の教師は実はよく分からないまま使っています。
(数学の訓練を受けていないからしょうがないか)
※「掛け算順序問題」のはなし 遠山啓さんの失敗 算数を考えずに信じる人たちがいるなんて!
https://ameblo.jp/otona-no-manabi/entry-12566133724.html

【交換法則】
3+7=7+3、2×4=4×2 というように、順番を交換できるという法則。
【結合法則】
(2+3)+5=2+(3+5)、(3×6)×2=3×(6×2) というように、かっこをどこにつけても計算結果は同じという法則。
【分配法則】
3×(5+2)=3×5+3×2 というように、かっこを外せるという法則。

◎交換法則について
3+7=7+3 というように、足し算は順番を交換することができます。これを、「加法の交換法則」と言います。
文字式で書くと、a+b=b+a です。

2×4=4×2 というように、掛け算も順番を交換することができます。これを、「乗法の交換法則」と言います。
文字式で書くと、a×b=b×a です。

大事なことは引き算や割り算では交換法則が成り立ちません。
例えば、4−2≠2−4 ですし、3÷6≠6÷3 です。
他にも、交換法則が成り立たない計算(行列積など)はたくさんあります。

◎結合法則について
交換法則と違い、3 つの数が登場する法則です。

(2+3)+5=2+(3+5) というように、足し算はどこから計算しても(どの場所にかっこをつけても)結果は同じです。
これを、「加法の結合法則」と言います。
文字式で書くと、(a+b)+c=a+(b+c) です。

(3×6)×2=3×(6×2) というように、かけ算もどこから計算しても(どの場所にかっこをつけても)結果は同じです。
これを、「乗法の結合法則」と言います。
文字式で書くと、(a×b)×c=a×(b×c) です。

ただし
交換法則と同じように引き算・割り算がはいると成り立たなくなります。

◎しかし、成り立たせる方法があります。
減法を加法、除法を逆数になおすことです。
これを使えば普通の計算であれば「交換法則」と「結合法則」が成り立つということです。

たとえば
$引き算(減法)であれば
4−2なら 4+(−2)というふうにです。
数学では算数とちがって引き算は負の数を足すというとらえ方ができます。
減法を加法になおして計算すれば、加法の交換法則・結合法則を使うことができます。

$除法(わり算)の場合は
除法は逆数のかけ算になおして計算するのです。
もとの分数の分母と分子をひっくり返した数のことを「逆数」といいます。
(たとえば 5なら5/1と見なします。すると、逆数は1/5となります)

8÷2=8×1/2 これなら 1/2×8 が成り立ちます。
すると、計算の順序を気にしなくてもよくなり、数の入れ替えも可能になるため、計算がやりやすくなります。
徐法を乗法になおして計算すれば、乗法の交換法則・結合法則を使うことができます。

まとめます。
・加法と乗法は交換法則・結合法則が成り立つ
・交換法則とは、数を入れ替えても計算結果が同じになること
・結合法則とは、先に計算するところが違っても、計算結果が同じになる
・減法は加法になおして計算することで、加法の交換法則・結合法則が使える
・除法は乗法になおして計算することで、乗法の交換法則・結合法則が使える

数学で大切なのは法則性を知ることです。
いつでも成り立つのか
どの条件であれば成り立つのかということです。
丸覚えがいろいろな問題を引き起こします。
分配法則は代数の基本である文字式の計算にとって基礎となるものですから
十分に理解することが必要です。

◎分配法則について
交換法則や結合法則とは違い、分配法則は足し算とかけ算が同時に登場する法則です。
(前回説明した通りに減法と除法はすべて加法と乗法と見なすことができます。
だから、減法・除法でも使うことができるということです)

3×(5+2)=3×5+3×2 というように、かっこを外せるという法則です。
実際、左側は、3×(5+2)=3×7=21 ですし
右側は、3×5+3×2=15+6=21 となり一致します。

文字式で書くと、a×(b+c)=a×b+a×c です。

このように計算式の( )をなくす法則を「分配法則」と呼んでいるわけです。

分配法則がなぜ足り立つのか説明します。
a×(b+c)とは
(b+c)+(b+c) ・・・ (b+c)をa回足すこと

これをbとcに分けて足していきます
(b+b・・・+b)はbをa回足すこと→ a×b
(c+c・・・+c)はcをa回足すこと→ a×c
一時そうすると
(b+b・・・+b)+(c+c・・・+c)=a×b+a×c

よって
a×(b+c)=a×b+a×c

一時、話題になった「インド式算数」は暗算をするために分配法則を使うことが多いのです。
(分配法則だけ使うわけではないですが)

たとえば 49×21なら
筆算では
49×21= 49×2×10+49×1=980+49=1029 という流れで解きます。
分配法則を使うと
49×21=(50-1)×21=1050-21=1029 と解けます。

それだけではなく
分配法則とその逆は
文字式の展開と因数分解そのものでもあるのです。
(a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd=a(c+d)+b(c+d)

わたしも中学生のころ整式(文字式)の因数分解が何をやっているのかよくわからなかったのですが
分配法則とその逆と分かって本当の意味で理解できました。

§3 素因数分解と因数分解は同じもの 数学の考え方を知る

素因数分解と因数分解、名前がよく似ていますが
あまりその関係が考えられることはありません。
実はこの二つは同じことをしているのです。

たいていは
素因数分解は約分のための
因数分解は方程式を解くための手段と思われています。

素因数分解とは、自然数を素数の積に分解することです。
素因数分解の「素」は素数の「素」です。
「素因数=素数」と考えて問題ありません。
数の基本単位の一つと考えていいでしょう。

「素因数」とは数学で言う自然数(1、2、3・・・)を割り切ることができる素数のこと
*素数・・・ 1 より大きい自然数で、割り切れる数が 1 と自分自身だけのもの
6=2×3 12=2×2×3 27=3×3×3 29=1×29 というふうにです。

自然数(整数の場合もあります)を素数の積(掛けたもの)で表すことを「素因数分解」といいます。
この場合、因子(要素のこと)は素数です。
つまり、数を素数の因子に分解するから素因数分解というのです。

因数分解は、素因数分解を発展させたものです。
どう発展させたのかといいますと
分解の対象を自然数から多項式(整式)に発展させています。
*単項式・・・ 数,文字,およびそれらの積として表される式のこと
*多項式・・・ 2つ以上の単項式の和(足したもの)として表される式のこと
*整式・・・ 単項式と多項式を合わせて整式と言います

つまり、文字を含んだ式でも因子(基本要素、単項式)の掛け算の形で表すことができるということです。
ab+ac=a(b+c)、 ac+ad+bc+bd=(a+b)(c+d)

実は、多項式は広い意味で「数」です。数の性質を持っているからです。
自然数(整数)と多項式は非常に性質が多くの点で似ています。
自然数を素因数分解するように、多項式も積の形に分解できます。
多項式を積の形に分解したのが因数分解です。

呼び方が違うのは習慣で使い分けしているからです。
「素因数分解」は自然数に対して使う用語(整数に対して使う事もある)。
「因数分解」は多項式に対して使う用語(一般の式に対して使う事もある)。

ここでは
数(自然数)で成り立っていることが文字を含んだ式でも成り立つという性質を利用して
自然数と整式を同じように扱うことで
計算の可能性を広げているわけです。

こんな話を取り上げているのはトリビアのような知識をひけらかすためではありません。
数学という考え方を示したいからです。

普通の人は数学の発見するために数を使っているわけではありません。
専門家や研究者以外が扱う数学とはどんなものなのでしょうか?
わたしは研究者以外の数学(特に学校の)は数学を数言語の練習と言っています。
それは言葉(言語)としての数学です。
数を使って必要なことを伝えるための方法です。
伝える・表すために数を使います。
(受験で点数を取るためだけという邪道もありますが)

これは「算数」でもできるわけですが
「算数」と「数学」の間には決定的な違いがあります。
算数は直接のものにこだわるので難度をあげるとパズルになってしまうことが多いのですが
数学ではたえず共通点を考え理屈をより広く成り立たせることを考えます。
そして、必要がない部分を捨てることで
核心になるものを見つけ出しさらに共通な範囲を広げていきます。
これを抽象化といいます。

ここでは抽象化することで自然数と整式が同じことができることを示し
計算の可能性を広げているのです。

§4 方程式は「因数分解」ではなく「平方完成」で解く 新しいトレンド

方程式を解くためには解を求めなければなりません。
ところが
解を求めるってどんな意味があるか分からなくても
数学の教師の言うとおりに答えを導き出して
問題が解ければ何となく満足感はあります。
(解を求めることは四則演算(加減乗除)とは全く違ったことです)

中学校・高校で扱う方程式は一次方程式と二次方程式です。
ax+b=0  ax2+bx+c=0

特に二次方程式を解くためにはx2をxの形に直さなければなりません。
二次方程式を解くための訓練として標準的なやり方は
整式の取り扱い練習→ 整式をくくる練習→ 展開公式の応用からの因数分解→ 二次方程式の解の公式を覚える
という流れになっています。

また
方程式と関数は数学では別の分野なので扱いも別になります。
方程式の解法と別の流れとして
グラフを書く技術として「平方完成」というものが使われます。
展開されている2次方程式を、○○²+□という形に変形することです。
(これは方程式を解くことの応用技術なのですが)

言ってみればこれまでは
「方程式を解く訓練」と「グラフを書く訓練」は全く別のものとして扱われてきたわけです。
数学の教師はそう思っていなかったかもしれませんが
数学の授業では「方程式・関数・恒等式」の関係をきちんと説明しない(できない?)のが普通ですから
実際には子どもの頭の中では別のものです。
(これは次回説明します)

でも
最近は数学教育を専門にする人の中にはこの二つを統一して扱おうと考える人も増えてきています。
「方程式・関数・恒等式」の関係をきちんと説明することを必要だと考える人たちです。

これは数学教育から考えると当たり前のことなのですが
当たり前のことが当たり前でなかったのは
日本の試験のふるい落とし主義と
複雑な因数分解を解くことで達成感をもたせることができるという教育効果?からきているのでしょう。
2+2ab+b2-c2-2c-1 (解けますか)
=(a+b+c+1)(a+b-c-1)
むずかしいパズルのような問題で点差をつける
というよりも
日本の試験制度は点数の差をつけるための問題を必要とするのが真相なのでしょう。
ですから
因数分解を方程式や関数を扱うための技術と考えると
必要以上の計算をさせていることになります。

エンジニア・工学研究者の話によれば
全体では複雑な計算でも一つ一つは
一次方程式、二次方程式の範囲ですむことが多いと聞きます。

しかも肝心なのはきれいに因数分解ができるのは現実の式ではほとんどないということです。
(因数分解は整数の範囲で計算するのが約束です。
試験問題では整数の範囲で計算できる問題しか出していないわけです。
因数分解できなかったときに初めて解の公式が使われます)

ですから
解の公式を覚えなくてもよくグラフと統一して応用が出来る「平方完成」を使うことが道理にあっていると考えるのです。
特に、医療の専門学校の受験では二次関数のグラフが間違いなく出題されますから「平方完成」は必修の技術です。
わたしがすすめている仲松式(仲松庸次さん)でも『ひとりで学べる数学 楽らく表』では
解き方は独特なのですが「平方完成」に基づいた解き方をしています。

わたしもほぼ0から訓練をする人には平方完成での訓練を考えています。
ここでは「平方完成」のやり方は説明しません。
「平方完成」でググればていねいに説明してくれるサイトがたくさんあるからです。
イメージだけは紹介しておきます。
  – Wikipediaより

§5 一見よく似た方程式・関数・恒等式はどう違うのか

方程式・関数・恒等式は外形が同じか、よく似ているので
違いが分からなければ見分けがつきません。

でも
この違いをはっきり知ることは大変大事なことです。
違いが分からないということは
やっていることがよく分からないが問題だけは解けているということになります。
(要するに丸暗記と変わらず、簡単に忘れてしまうことができるということです)

方程式と関数は外見では見分けがつきませんが
#「方程式」→ 特定の条件下のX(わからないもの)を求めるための式
xは未知数と呼ばれます。
数学では「代数」という分野になります。
わからないものをxと置くと
「鶴亀算」や「旅人算」のように解法を覚えなくても
手続きを知ることで問題を解くことが出来ます。

#「関数」→ 「特定の条件」のときのXの値を求めるもの
もともと「関数」は英語ではfunctionといい、「働き」という意味です。
xに対する手続きを示した式です。
数学では「解析」という分野になります。
もともとは「函数」と書き
ブラックボックスを指していました。
金を入れたら商品が出てくる自動販売機のイメージです。
xに数字を入れてやると決まった値が出てくるしくみです。

条件が定まったときは方程式になるので
理屈さえわかれば機械的に方程式をいじれば解けます。

#「恒等式」→ 等号 (=) を含む数式であって、そこに現れるあらゆる変数がどのような値にあっても、常に等号で結ばれた左右二つの数式の “値” が等しいもののこと。
ちょっと説明が分かりにくいですが左右の式の変数にどんな数を入れても=が成り立つ式です。
両辺の数式が=で結ばれた式は恒等式です。
(x+a)(x+b)= x2+(a+b)x+ab といった風にです。
abそれぞれにどんな数を入れても=の関係は変わりません。
よく公式に使われます。

この3種類の式は外見が似ていても意味することが全く違います。
この違いを知ることが数学の基礎です。

関数(函数)というものは人類の大発明の一つで
近代科学(特に物理)、技術は関数の考え方がなければ実用にはなりませんでした。
残念ながらそのすごさはなかなか分かりません。

ごく一部の学者は教えてくれています。
わたしも半世紀かかって言っていることがわかり始め
やっと最近、そのすごさがはじめて分かってきました。
学校教育では関数の意味することを教えるようにはなっていませんから。

それは
数学教師が教えるのは式の立て方と計算の仕方だけ
科学者は自分がやっていることは当たり前なので
考え方ではなくワザとしてとらえています。
他人にわざわざその意味のとらえ方、説明することなど考えることなど考えることもない。
誰も積極的に教えてくれないから気づかれないのも当然でしょう。

実際
Excelで関数と呼んでいても、関数が何のことか考えることはありませんね。

§6 関数(函数)はなぜ人類の大発明なのか? 未来を予測するとは

関数は「yとxの関係性を示す式」のこと。
(xとy以外の文字でも使えます)
いろいろな種類の関数がありますが
二次関数だとy=ax2+bx+cのような形です。
関数は必ずグラフに描けます。
「関数」では決まった条件の値を計算するときは「方程式」を使います。

もともと
代数で「わからないものを、とりあえずXと置く」
「わからないものはわからない!」と開き直ることで
「どういう関係性や規則性があるか?」ということを式で表すことを始めました。
そこで関数が生まれたわけです。

近代科学はガリレオが数を使って法則を表すという手段で
仮説を実験によって検証するという「科学」の方法を作り上げることから始まったのです。
ガリレオは「自然という書物は数という言葉で書かれている」と言っています。
(正しくはガリレオ・ガリレイなので姓のガリレイと呼ぶのが正しいのですが習慣に従います)

では
関数は人類の社会にどんな影響を与えたのでしょうか?
一言で言えば「未来を予測する」ことが出来るようになったことです。
当然、明日どんなことが起きるかを予測することではありません。
今まで経験で予測するだけだったものを数式で予測できるようになったということです。

たとえば
それまで大砲の弾の飛び方は撃ってみなければ分からなかった。
(しかも高速度撮影が出来るようになるまで見える形で弾道を記録することはできなかった)
それに対して
数式を使えば撃った後の将来の弾の位置を知ることが出来るようになりました。
撃つ前に撃った後のことを予測できる。
これが数式(関数)で未来を予測するということの意味です。

その流れが行き着くところが「微分・積分学」です。
数学では「解析学」とはほぼ微積分を使って関数の性質を調べることを指します。

実際に
学問の発達により、近世・近代には様々な自然現象がニュートン力学(古典物理学)で説明できるようになったため。
現象のメカニズムが知られると同時に
「原因によって一方的に結果は導かれる」という因果律や
「全ての出来事はそれ以前の出来事で決定される」といった決定論の考えを抱く研究者も現れるようになったくらいです。

「ラプラスの悪魔(Laplacescher Dämon)」という
「全てを知っており、未来も予見している知性」が存在できるという考え方も提唱された。
しかし
20世紀初めに生まれた「量子力学」によって、決定論は原理的に不可能である事が明らかになった(不確定性原理)。これによりラプラスの悪魔は完全に否定された。
ここで人類の知性の広大さとその限界がはっきり示されたのです。

このように
近代科学、現代文明は数式で関係を示すこと(関数)で出来上がったわけです。
残念ながら学校での数学も理科も
一つ一つの知識や公式、計算の仕方を教えてくれても
このような一番大事なことを教えてくれません。
わたしも半世紀の間の独習でやっと気づくことが出来ました。

§7 計算はできても平方根のイメージってむずかしいですね

二乗した結果の元の数(平方根)をイメージするのは大変むずかしいものですね。
ピンとこないほうが自然なのでしょう。
わたしも誤解していましたが(数学の授業ではそう教わったから)
平方根という数が実際にあるというよりも
二次方程式を解くために定義された数です。
(0や負の数も引き算の計算のためにつくられた数です)

ただ、数として扱うと都合がいいから数として扱われることになりました。
(これを理解すると数学者クロネッガーの言った言葉である
「自然数は神の作ったものだが、他は人間の作ったものである」の意味がよく分かります)
そのようにつくられた数の上に成り立つ数学の考え方は科学の法則や法律や規則のようなものとは違ったものだということです。
だから、数学は覚えるものではないのです。

ところで
わたしは習慣になっていますから
11なら平方根は3と4の間になるなあ
3の二乗は9、4の二乗なら16だから3に近い数になるはずだと頭に浮かびます。
言ってみれば平方根とは九九の答えから掛けた数を求めることです。

100坪(330平方メートル)の田んぼなら10×10×3.3だから
一辺が10×√3より少し大きいからだいたい10×1.7か1.8だから17~8m四方ぐらいかと頭に浮かびます。
九九ができていれば当然100までの平方根に当たりをつけることが出来ます。
さらに、インド算数のように19×19までの九九をやっていると400まで平方根を使わなくても当たりをつけることが出来ます。

特にコンピュータを扱う人なら2の累乗数は1,2,4,8,16,32・・・ 1024ぐらいまでは自然に頭に浮かびます。
計算ではなく習慣ですから。
数学の計算の基本は日頃からの習慣ですから。
平方根を身につけるためには
2,4,8,16,32・・・ 3,9,27,81・・・ 5,25,125,625・・・
こんな累乗に慣れておくことがけっこう役に立ちます。
何となく数学は理詰めでやっているように勘違いされていますが
実は直感が大きいのです。
たいていは後から理屈をつけます。

正確ではなくとも当たりをつけられるというのは大事なことです。
けっこう、普段の生活でもこれぐらいの計算をすることはあります。

以前は、仕事柄、用意する箱の容量を概算したり、どれぐらいの生地や紙を用意しなければならない時なんかに大体の当たりをつけることはよくやりました。
高い評価を受けているインド算数ではこんな風な体感を大事にしているようです。

ただし、言っておきますが
計算と数学はほとんど別のモノです。
有名な数学者でも異常なほど計算が得意な人とおそろしく計算に興味がない人とに分かれます。
たいていの現代数学の分野で使われる数は抽象的な数で(数と言うよりも概念です)
実際の数字の計算をすることはまずありません。
でも、数学者といえばどうしても計算が得意な人というイメージが強いようですね。

平方根への入り口として
故板倉聖宣さんのグループが開発した授業書《2倍3倍の世界》を紹介したいのですが
著作権の事情から全文をUPすることができません。
(仮設社 https://www.kasetu.co.jp/ で手に入ります)
(参考のために授業書の一部(図を含む)を引用しましたが引用の範囲を超えているというのであれば消します)
長さの2倍3倍と面積の2倍3倍の違いを考えていくことで平方根の考え方の基礎を知ることができます。

Web上での解説を参考に挙げます。

授業書<2倍3倍の世界>の一場面から 子供達は「面積2乗の法則」を見つけられるか?
http://www2.nsknet.or.jp/~mshr/report/nibai.htm

仮説実験授業 《 2倍3倍の世界 》 と、体積3乗の法則
https://blog.goo.ne.jp/i30321/e/ee40ad0f1533bef240aea2b2bbc152a4?fm=rss

§8 反比例は比例の反対ではない 反比例とは比例の一種?ややっこしい言葉です

比例(正比例とも言います)と反比例の関係は反対の関係ではないのですが習慣でそう呼ばれています。
英文では(inverse proportionality)と言います。
これも原文の意味は「比例の反対」です。
日本でできた言葉ではなく外国語由来であることは間違いないでしょう。
残念ながら英英辞書でも語源はでてきません。

反比例を一言で説明すれば「逆数に比例」することです。

まずおさらいです。
小学校で習う比例はxとyの比が一定である関係のことです。
「y=ax」の別名が比例です。グラフが原点を通る直線、一次関数のことです。
(xが2倍になればyも2倍、xが3倍になればyも3倍というふうに同じ割合だけ互いに値が増えます)

反比例を式で書くと「y=a/x」となります。
一次関数でも二次関数でもない、中学校で習う第3の関数です。

「x」と「y」は「変数」と呼ばれます。
なぜなら、「x」になにを入れるかによって「y」の値も変わる数だからです。
一方、xの上にのっている「a」は「定数」です。
xやyに関係なく変わらずに定まっている数だからです。
式を変形すると
a=xy と書くことも出来ます。
この式からaは一定だからxが増えるとyが減り、yが増えるとxが減ることがわかります。

1/xをxの逆数と言います。ですから1/xをzとおくと
y=a/x(y=a×1/x)の式は y=azになります。
こうすると比例の式で表すことができます。
これが逆数に比例するという意味です。
グラフにするとこうなります。

見ただけで比例(一次関数)とは全く違うものであることがわかります。

でも
反比例が比例と同じようによく使われるのはけっこう実用になるからです。
工学や物理学の分野でも、日常でもよく使われます。

*自分の家から駅まで行くときの速さとかかる時間。
*ある物を机に置いたときの、机と物が接する面積と圧力。
*仕事を完成するのにかかる日数と一日あたりの仕事量。

といったふうに全体の量がきまっているときに二つの量の関係を示すことができます。

そこで
反比例とよく勘違いされるのが「トレードオフの関係」です。
※トレードオフ・・・ 何かを得ると、別の何かを失う、相容れない関係のこと

たとえば
同じ分野の商品A、Bで、Aがシェアを伸ばしたらBのシェアが下がるという関係は反比例じゃないということですね。
最近ビールの売り上げは伸びていません。
ビール(x)と発泡酒(y、ビール以外のビールをこう呼んでおく)の売り上げを合計するとだいたい横ばいでしょう。
すると
発泡酒の売り上げが増えるとビールの売り上げが減る。
ビールの売り上げが増えると発泡酒の売り上げが減る。
これは反比例の関係ではありません。
仮に総売上10兆円としましょう。
そうすると
x+y=10 となります。
この式を変形します。
y=-x+10
ご覧の通りこれはxの係数が「-1」の一次関数であり、負の比例(右下がりの傾き)の式です。

つまり、「トレードオフの関係」は一次関数で表すことができるのです。
「トレードオフの関係」と反比例の違いがわかってもらえたでしょうか。

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