母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

カテゴリー: トレーニング

  • 英文を読むための基礎

    §1 英文多読のススメ 多読とは文章を分析しないで大意を把握する読書法です

    ここでは「SSS英語多読研究会」の多読法を紹介し
    わたしが実際に行ってみた感想を書きます。
    http://www.seg.co.jp/sss/index.html

    ◎多読とは、文章を分析しないで大意を把握する読書法です。
    SSS(Start with Simple Stories)の多読法は、従来不可能であると思われてきた英語初級者でも楽しく始められ、楽しく続けられる多読法です。

    ◎100年前から常識だった多読
    昔から多くの英語教師が、「英語を獲得する一番良い方法は多読である」と主張しています。
    多くの英語教師たち、夏目漱石や松本亨といった人たちも多読を勧めています。

    ◎なぜ多読が普及しなかったのか?
    しかし、今までは、多読は上級学習者にだけ許された学習法でした。
    英語教師が勧めていた「やさしい本」がむずかしすぎていたからです。
    高校生・大学生相手でもPGR2-3(基本語彙600-1200語レベル)の本から読み始めさせるために、1年間の学生の読書量も、1万語~10万語くらいのものでした。

    ◎勧めるのは非常にやさしい本からはじめ、100万語単位で読む多読です!
    SSS英語学習法研究会の進めるすすめる多読は
    非常に易しい本からはじめて
    旧来の多読法の10倍以上の種類の本をつかうことにより
    従来の多読の10倍以上の量の英語を読む多読法です。

    ◎従来の多読法と違い、無理なく基礎力が付きます
    英語初級者の場合、100万語読んででやっと(旧来の多読の出発点であった)PGR2-3レベルに進む位のゆっくりさです。
    従来の多読法と違い、年間100万語~200万語読むことが十分に可能です。
    (わたしも1年では無理でしたが13ヶ月で100万語を読みました)
    はじめはゆっくりなのですが、1年後、2年後の成果では
    今までのどの多読法よりも、また精読法よりもはるかに高い効果を得ることができます。

    実際わたしはほぼ36ヶ月で「270万語」読みました。
    不思議なことに今までいわゆる精読をしていたころは
    読んだ後から気になった文を探し出そうとしてもどの部分だったか探すのが大変だったのですが
    多読だとすぐに探し出せるのです。
    そして、精読していたころは読んでいる内に先に読んだはずの本文を忘れていることに気づきました。
    精読よりも多読の方が本文を覚えているのが不思議でした。

    *「精読」・・・ ここでは普通におこなわれているように分析しながら漢文を読むように前後をひっくり返し本文を読むことを指します
    多読では文の頭から順に読んでいきます。
    多少英文が読める人でもその技術を身につけるためには中学1年のレベルのぐらいの文から始めないと慣れることができません。
    わたしも幼児向けの絵本から読み始めました。

    また
    あとから気づいたのですが
    いつの間にか基本単語のスペルが暗記せずに頭に入っていました。
    ただし
    主従関係が複雑な文とセンテンスが長すぎる文は
    やはり高いレベルでの多読ができていないと読むのがむずかしいのは事実です。
    でも
    最近の大学入学試験では恐ろしいほど本文が簡単になっています。
    わたしが受験生のころは19世紀の荘重な文体を読むことが勧められたくらいでしたが
    今時、そんな文章を出すところはないでしょう。
    医療の専門学校ならトップレベルでなければ十分多読で合格レベルの読みができます。

    わたしは多読をしたときに自前でテキストを買い
    その後も買い足したものがありますので
    現在、英文Graded Reader300冊以上、英文児童書が350冊以上あります。
    *Graded Readerとは本文の長さや文法、基本語彙数で段階ごとにテキストを分けたものです。

    現在、わたしが持っているGraded Reader、英文児童書は無料貸出しています。
    (ただし、デポジット制です)

    「Graded Readerリスト」はこのサイトの中の「Graded Reader」からダウンロードできるようにしてあります。

     

    §2 なぜ、英語は文型が大事なのか Englishの歴史から知る

    Englishと日本語は非常によく似たところがあります。
    それは言語の歴史から言うとともにズタボロな言語だということです。
    互いに何度も外国語の影響を受けて吹きだまりのようになってしまったことです。

    Englishは今のドイツ語の先祖に当たる言葉を使っていた部族がブリテン島(イギリス本島)に渡った時から始まります。
    この時代は「古英語」と呼ばれます。
    その後、ブリテン島は北欧部族の草刈場になりいろいろな部族がやってきて
    古英語にいろいろな影響を与えます。
    (幸村誠『ヴィンランド・サガ(VINLAND SAGA)』の舞台です)

    その中でも
    大変強い影響をブリテン島に与えたのがThe Norman Conquest of Englandです。
    当時のフランス語を話す部族がイングランド(ブリテン島の中央部)の支配者になり
    支配階級はフランス語、下層階級は今までの言葉を使っていました。
    特に、名詞は強い影響を受けます。
    (現在のEnglishでは同じ物を指す言葉にフランス語由来のものと古英語由来の両方ことが多い。
    豚はブウブウ鳴くのがpigで料理の皿に載るとporkなど)
    しかも、いつの間にかこの複数の言葉が入り乱れる中で
    古英語の文法も影響を受けてしまい、文法が単純化されていきます。
    そして、下層階級しか話さない言葉であれば
    誰も正式な使い方など気にしなくなります。
    (学問上はこれを「クレオール化」と言います)
    ここに現在に続くEnglishの形が出来上がったわけです。

    実は日本語も外の言葉の影響を強く受けたという点では
    事情は違っても同じようないきさつがあります。
    そのうちに「国語キソのキソ」で書きます。

    以上は一般言語学の素養がある者にとっては当たり前の知識ですが
    英語だけを必要な外国語と考える者には気がつけないことです。

    それでは今のEnglishがどんな独特の形を持つようになったか説明します。

    Englishも含まれる言語史上で「印欧語族」と呼ばれる系統の言語には共通の特徴があります。
    代表的なものは「格」や「性」といったものです。
    「性」というのは名詞が「男性・女性・中性(Englishの場合)」に分類され
    特に代名詞ではそれを意識する必要があるということです。
    これで減点、不正解にされた人も多いと思います。

    それでもまだ、「性」は分かりやすいと思います。
    「格」と言われると英語でも「主格」「目的格」などという言葉は聞いたことがあると思いますが
    言っていることがよく分からない人も多いでしょう。
    日本語でも「~が」「~に」「~を」といった「格」をあらわす働きがあります。
    日本語ではこれらを示すために「格助詞」と呼ばれる言葉が使われています。
    文法上の説明をするとむずかしいのでしません。
    肝心なことだけ言います。

    印欧語族の子孫フランス語、ドイツ語、イタリア語・・・ では
    この日本語の格助詞の働きが動詞や名詞では形が変化(格変化)することで示されます。
    つまり、性でも変化するが「格」でも変化するということです。
    名詞・動詞の格変化で「て・に・を・は」を示すことができます。
    そうすると語順にとらわれなく文を書くことが可能です。
    日: 私が りんごを 食べる。 / りんごを 私が 食べる。
    独: Ich esse den Apfel. / Den Apfel esse ich.

    ところが
    Englishは外の言葉と混ざってしまう間にぐだぐだにされて代名詞を除いて格変化を失ってしまいます。
    そうすると
    Englishの文では名詞は自分で「て・に・を・は」を示すことはできず
    「格」の働きは単語の文中の位置でしか示すことができません。
    語順が変わると名詞は文の中で指されることが変わってしまいます。
    I eat an apple.  が An apple eats I. になったら大変です。

    だから
    英語では五文型を理論的に徹底重視する人が多いのです。
    五文型にとらわれずに体感での慣れを重んじる人もいます。
    それでも、目標は同じです。

    歴史の中でグダグダになったEnglishはそのおかげで
    世界の言語のうちでは文法上わかりやすい言葉になりました。
    だから
    日本語を話している人間からすると他の言語よりもEnglishが取り付きやすいのです。
    (ドイツ語・フランス語・ロシア語より覚えることが大変少なくてすむ)

     

    §3 初心者の基礎練習には「並べかえ問題」が役に立ちます

    英語の初心者や在学中にあまり得意ではなかった子のために
    そして、苦手意識をもつ人のためには
    まず、怖がらずに慣れるために発音と音読から始めるように言ってきました。

    ※①不得意でも、まず、怖がらずに慣れることです 発音と音読から始めましょう
    https://ameblo.jp/otona-no-manabi/entry-12604537662.html
    ※②リズム音読「なみのリズム」に注目
    https://ameblo.jp/otona-no-manabi/entry-12606249340.html

    その上で簡単な英文をたくさん読む練習に入りますが
    やはり、当然最低の文法や知識がなければ読むことはできません。
    今までのやり方を極端に分ければ
    *理解を求める
    *丸暗記を求める
    という二つのやり方になります。
    これは言葉を「習慣」ととらえるのか「論理」ととらえるによると思います。

    でも
    実際の言葉は
    言葉は習慣であっても合理性をもったものです。
    言葉は理屈にはしたがわなくても
    筋道をもっているという事です。

    そうすると
    言葉の練習法は
    説明はするが合理的な繰り返しをすることが一番の近い道です。
    理解はした方がいいのですが、理解しなければ身につかないものではないからです。
    当然、筋道を理解したほうが身につける手際がよくなりますが。

    初心者や不得意な子はまず最初につまづくのが「語順」です。
    言葉のしくみが違うので「語順」でとまどうことが多いのです。
    「語順」を身につけるためには
    なぜかということよりもどうなっているかということの方が大切です。
    その時に役立つのが「並べかえ問題(整序問題)」です。
    ところが
    「並べかえ問題」は大学入試向けの問題集はありますが
    英語の初心者用のまとまった問題集ってあまりないのです。

    初心者用では田地野彰さんが「意味順」書き込み練習帳を何冊か出しています。
    (NHK基礎英語 『中学英語完全マスター「意味順」書き込み練習帳』は手に入れています)
    内容は説明中心でいろいろな工夫がされているのですが
    繰り返しのためには問題数が少ないかなと思います。

    そこで見つけたのがKUMONの中1~中2用の三冊本の「並べかえ問題」集です。
    くわしく文法の説明はしていなくても、簡単な並べ替え問題を通じて、無意識に英語の感覚が身につくはずです。
    KUMONについては賛否両方の受け取り方がありますが
    いつも実際の必要に目が向いているのが感心するところです。

  • 英語が不得意なあなたが学ぶためには まず、慣れることから

    §1 不得意でも、まず、怖がらずに慣れることです 発音と音読から始めましょう

    わたしの英語の基礎練習の仕方は次のコラムにかいてあります。
    英語ができない人は 発音と音読から始めましょう まず、怖がらないことです
    https://ameblo.jp/otona-no-manabi/entry-12574307047.html

    ここで取り上げるのは大人が資格を取るために医療の学校にはいることに絞っての基礎練習の仕方です。
    准看護学校は英語がないのが普通ですが
    一部で看護学校と同じ科目の試験をするところもでてきています。
    その場合は英語が必要となりますので
    受験校を選び時にはよく考えないといけません。

    よく入学試験で医療の英単語が出るという話を聞きます。
    一部の看護学校ではそんなところもあるかもしれませんが
    実際には特別な単語は注釈が入りますので気にする必要はありません。

    ただ
    気にしないといけないかもしれないのは
    体にかかわる単語で日常当たり前に使われているが
    日本の学校英語では使われていない意味があるときです。
    「body」のようなケースです。
    普通の学校英語で絶対使われることがない使い方です。
    何を指しているか自分で調べてみてください。

    わたしが英語のトレーニングをするときに一番困るのは
    他の教科と比べても個人差が大きく
    しかも
    数学と違って短い時間で上達がむずかしいことです。
    (数学は特別にレベルが高くなければ本気であれば結構どうにかできます。
    というか、そのノウハウはあります)

    英語はどうしても時間をかけることが必要です。
    ただし
    今、新共通試験で話題になっている四技能(Reading、Listening、Speaking、Writing)のすべてを身につける必要がないことが救いです。

    特に
    英語が全くできない(自信のない)人はどこから始めればいいのでしょう。

    まず
    無条件で慣れることです。
    外国語を学ぶとは慣れることです。
    慣れるための一番いい方法は
    言葉を発音することです。
    次に文を音読することです。
    ヘタでもかまいません。
    その言葉がもっている感覚に近づくことです。

    確かに
    これは受験にはあまり出ません。
    (言葉のアクセントや文のイントネーションの問題で出るかもしれませんが)
    それでも
    不得意な人が言葉に慣れ、自信を持つためには一番近くて合理的な方法なのです。
    慣れていくうちに自然に文の形(それが文法です)が身についていきます。
    読む量が多ければ言葉(単語)を覚える練習にもなります。

    仕事や生活に追われながら受験勉強をするのは大変です。
    大変であっても習慣を作っていけばいいのです。
    そして
    それが入学後の助けになります。

    具体的な練習方法ですが
    ①言葉の発音を学ぶための方法として「phonics」があります。
    ②文の読み方の練習として「なみのリズム」という練習方法があります。
    これは直接native speakerに頼らない
    自学自習のために作られた合理的な方法です。

    わたしが目的としているものはnative speakerのようになることではなく
    最低限の自信をもつために英語に慣れることです。
    そのために発音と音読は一番速く効果が目に見えます。

    ①②をやって
    拒否感さえなくなればあとは普通に基礎の英文の練習をして
    あなたが受験する学校のレベルまで能力をあげればいいのです。

    そして
    最後に過去問題で自信をつければいいのです。
    ここまでやれば入学後英語が必要でなくても
    あなたは自分で不得意なことをクリアしたのですから
    学んだことが入学後の学校での訓練に役立ちます。

     

    §2 フォニックス(Phonics)をするなら『あいうえおフォニックス』を薦めます

    わたしは英語(日本の学校で教えているもの)は
    Englishと違った考え方の上に成り立っていると考えています。
    そこに日本の英語がどれだけ高度になってもEnglishになれない理由があります。
    その理由は追々説明していきますが
    日本の学校教育でPhonicsを無視していることなどはその最たるものと考えています。

    Phonicsとは単語のスペリングと発音を結びつける練習をいいます。
    われわれが日本人だから英単語を発音できないのではなく
    実はEnglishはnative speakerでも最初はスペルを見て発音できないのです。
    ですから
    まず、子どもがEnglishを読むためには大変大事な練習になります。

    日本人が冒す最大の勘違いは正しいEnglishがあるという考え方をすることです。
    現在、Englishを話す人、学んでいる人は20億人ぐらいと考えられています。
    そのうち第一言語として話す人は4億人ぐらいです。
    そうすると現在Englishを使う人の80%は外国語として使っていることになります。

    圧倒的に多くのEnglishを使う人は正しいかどうかわからない(確信をもてない)上で使っているのです。
    (自分が生まれ育った言葉ではありませんから何が正しいかという判断がむずかしい。
    それでも〇国では自分のEnglishは世界一正しいと堂々と言ったりする人もいますが)

    加えて
    native speakerであっても米語・英語・豪語にははっきりした違いがあります。
    今時「King‘s(Queen’s) English」が唯一正しいなどと言う人もいないと思います。
    すでに、どこでも正しいEnglishなどないということです。

    ですから
    自分が生まれ育ったEnglishを除いて正しいものがあるという考え方自体に意味がないのです。
    (誰だって自分の母語が正しいと思っています。それでも方言という問題はありますが)

    そうすると
    日本語で育った日本人が使うEnglishはもともとJapanese Englishなのです。
    だから
    多くのEnglish話者に受け入れてもらえるEnglishであるならば
    最初から母語とは違うものですから日本流として堂々と使えばいいのです。
    実際、ある大学教授の個人的なアンケートでは非native speakerの間ではJapanese Englishが一番聞き取りやすいという結果だったと聞いたことがあります。
    すでにEnglishが世界言語である理由はnative speakerだけの言葉ではなくなっているという所にあります。

    わたしが『あいうえおフォニックス』を薦める理由としては「(幻想の)正しい発音」にこだわることなく
    日本語のくせがあっても通じるなら堂々と使えばいいという考え方をしているところにあります。
    (これがないから日本英語はどれだけ高度なものでもただの真似でEnglishの内の一つにはなれないのです)
    その上でよい発音(判別できる発音)とは何かということを追究しています。

    効率よく練習するためには本になっているもの(株KADOKAWAが出版)を使った方がいいと思いますが
    YouTubeだけでも練習が出来ます。
    YouTubeのサイトで「あいうえおフォニックス」で検索すればすぐ見つけることができます。
    それも薦める理由です。

     

    §3 フォニックスだけではまだ発音には不十分です リズム音読「なみのリズム」に注目

    広い意味でのフォニックスは単語の発音も含みますが
    本来の意味でのフォニックスは母音・子音の発音と綴りを結びつける練習を指します。

    実際のEnglishの感覚がなければ
    母音と子音が発音できればこれで単語の発音ができると考えるのは当たり前です。
    もう少し知識があると
    そうか日本語とはアクセントが違うのか!
    と考えますが
    アクセントを合わせても
    それでもまだEnglishにはなりません。

    これは実際のEnglishをマネしつくして身につけるか
    (何となく違いを感じても体験だけではどうすればいいのかわからない人も多いのですが)
    それとも
    音声学(発音のための学問です)で理論的に極めるかしかありません。
    Native speakerだからといっても意識できていないことがありますから
    Native speakerに学んだからといってわかるわけでもありません。

    では、何が足りないのか?
    辞書を見てください。
    単語を区分けしてあるのが分かると思います。
    その分けてあるものを一つ一つを「シラブル」と言います。
    シラブルは日本語でいえば「音節」、単語をさらに分ける単位です。

    日本語では音節の基本は子音+母音でできています。
    拗音のように子音が重なる場合もありますが
    基本、「子音+母音」の一対一が1セットの音節になり
    大体は一つ一つの音節を同じリズムで発音していくことになります。
    たとえば
    「こんにちは」は こ(ko)・ん(n)・に(ni)・ち(ti)・は(wa)となります。

    ところがEnglishではシラブルのリズムが日本語よりも複雑になります。
    たとえば
    「permit」 は per・mit つまり、2音節から
    「important」 は im・por・tant  3音節から
    「spring」は1音節からなる語
    という風にです。
    (正確には日本語の音節とシラブルの考え方には違いがあるようです)

    そして
    日本語の音節との違いは
    Englishでは1シラブルが何文字であっても1シラブルどうしを同じリズムで発音します。
    例で言えば「important」の「im」と「spring」は同じ1音節でも文字数がちがいますが同じ時間(リズム)で読まなければなりません。

    これができなければ
    どんなにEnglishらしい発音ができてもEnglishには聞こえないのです。
    これができただけでも発音する子はものすごくEnglishらしく発音ができた気になります。

    当然
    日本人がこのシラブルの特徴を知らなければ聞き取るときにもハンディキャップになります。
    特に子音が消えることが多い米語では非常に聞き取りに困ります。

    このことは体験的には気づいた人たちがいたはずですが
    はっきりと気づいて意識して英語教育に取り入れたのは
    高校・大学で英語教育にたずさわった
    寺島(隆吉・美紀子)夫妻です。

    英語教育が専門ではないわたしが
    英語の受験トレーニングをどんな立場で行うか考える時に
    夫妻の仕事には大変助けられました。

    寺島夫妻のことはさておき
    実際にはシラブルはアクセントと結びついてEnglishらしい発音になります。
    わたしが知っているかぎりでは
    それを含めた一番実際的な練習方法が
    「なみのリズム」です。
    http://naminorism.com/strength_rhythms/

    このトレーニング方法を開発したのは
    岡山で「英語のlearning design」をやっている「かみじょうあさこ」さんです。
    英語のlearning designとは聞き慣れないことばですが
    「英語の学習法の全体像を伝え、生徒さんのレベルや資質に応じた学び方をデザインし、実践していくお手伝いをすること」だそうです。
    上達したい人は一度訪れてみる価値があるサイトです。

    わたしはトレーナー・コーチとしては
    自分の限られた力に頼るよりも
    日頃から
    十分な力がない子のための
    目的に応じたいち番合理的な上達法・
    一番取り組みやすい方法がないかを探し回って
    それをどう役に立てれば一番効果的なのか考えています

     

    §4 伝わる発声(発音)とは 日本人が学ぶ必要がある英語(English)とは

    ここで話がしたいのは
    専門にEnglishを学ぶことができない人が何を目標に学べばいいのかということです。
    (わたしはたいてい、英語は「学校英語」、実用で使われているものをEnglishと呼びます)

    学校の教師や専門家は勝手に暴走するものです。
    自分の教科・専門以外を考えずに、分からずに
    自分の専門のレベルだけをどうのこうの言う人が多いのです。

    現在、学校英語ではレベルの高い4技能(読む・書く・話す・聞く)を目標にすることになっています。
    でも
    考えてみてください。
    すべての人が高いレベルの英語を学ぶなんて正気の沙汰ではありません。
    個人個人の能力がどうかという前に
    必要以上の高いレベルを学ぶ前に
    その子その子がやらなければならないことがあります。
    世の中すべてが英語の専門家になるわけでもないのです。

    数学、化学、スポーツ、職業訓練・・・ いろいろあります。
    すべての人がレベルの高い英語を身につけることができるわけでなないし
    身につける必要はありません。

    でも、できるならやっぱりできたほうがいいものです。
    確かに今の時代必要なだけはできた方がいいでしょう。
    大事なのはそのために労力・資源・能力をどう活かすかということです。

    労力と資源の使い方を大学の入学試験を例に考えてみましょう。
    100点満点の試験で
    50点までに点数を上げる労力と
    50点を70点までに上げる労力
    70点から80点までの労力
    (80点以上を取るためには才能が必要です)
    はほぼ等しいのです。

    つまり
    ほぼ完全である80点まで能力を上げるためには
    普通(50点)のレベルまで上げるための3倍の労力がかかります。

    ですから
    このことを頭に入れて考えると
    学ぶ必要を感じていても十分な時間・努力ができない人は
    目標の設定の工夫、労力・資源の配分で
    目的に必要なレベルを手に入れることができます。
    英語で80点を目指すよりも
    もっと、点数が取れていない教科に力を入れればいいのです。
    (ただし、点数が取れていないのですから、これにはコーチ・トレーナーの力を借りる必要があるでしょう)

    最初の話題に戻りましょう。
    外国語を学ぶとことは単純に言い切ってしまえば
    習慣を身につけることです。

    だから
    「努力×才能×経験」になります。
    外国語学習はどこにいても「努力×才能」は使えますが
    経験はその言葉を使っている所で積むしかありません。
    (特に「正しい」言葉を目指すとすればなおさらです)

    じゃ、日本で普通に学ぶとすればどうすればいいのか。
    わたしの元同僚の英語教師に
    高校生の時米国のハイスクールで学び
    日本で大学を卒業した人がいます。

    わたしは彼のEnglishの発音に感心していました。
    ものすごくきれいでペラペラなのかって
    いや、全く逆なのです。

    発音もあまり外国語らしくなく
    どちらかと言えば日本語の発音なのです。
    しかし
    リズム・イントネーションがEnglishなのです。
    そして
    非常に聞き取りやすいのです。
    きっと
    Native speakerが聞いてもよく分かると思います。
    実際、以前それで生活していたわけです。
    わたしはこのあたりに外国語を学ぶときの核心があると考えます。

    これは外国語を身につけるのには
    特に第二言語であれば
    完全なコピーを目指さなくても
    伝えるために必要なポイントを目指せばよいということです。

    学び方の研究をする人
    学ぶための道筋をつける者の能力とは
    よりレベルの高い訓練方法を目指すとともに
    その余裕がない者のために
    不完全であっても通用するために最も大事な部分を見つけ出すことです。

    多くの人は専門家になるために学ぶわけではありませんから
    基礎になる部分こそきちんと訓練するのです。

    わたしは英語教育が専門でもないし
    はっきり言えば外国語は不得意です。
    それでも
    初心者、できない人が必要な目標をクリアするための手助けはできます。
    たしかな基礎になるもの
    合理的で有効なトレーニング方法は
    専門家であるよりも非専門家の方が見えることもあるのです。

  • わたしはオトナが学ぶための手段としてライフスキルが必要だと考えています。

    わたしはオトナが学ぶための手段としてライフスキルが必要だと考えています。
    しかし
    私の事業ではライフスキルを身につけることを目的にしているわけではありません。

    それでも
    学びのために気合いや気持ちの持ちように頼るよりも
    スキル(=技術)として考えることで訓練で身につけることができます。
    学びを通してよい習慣(スキル)を手に入れ
    よいスキルを通してよい学びができるようにしていきます。

    ライフスキル 10のスキル
    ライフスキルとは、 世界保健機構(WHO)が日常の様々な問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するために必要不可欠な能力と定義づけた10の技術のことです。

    ライフスキル学習の定義
    ライフスキル学習の目的は「個人の人権を擁護し、健康問題と社会問題を積極的に予防することによって幸福な生活を営む点にあります。(WHO、1998)」
    ライフスキルとは「うまく付き合い、日常生活でのイライラやストレスなどをコントロールする技術」です。
    「ライフスキル」は心の持ち方でストレスを無くす方法ではなく、ストレスと付き合う技術です。

    人が日ごろ暮らしていく時、「何を、どうするのか」という課題がいつでもふりかかってきます。
    そのたびに、自分とまわりの人、社会、環境とのバランスとることが必要になりますが、
    何をどうしていいのか分らなくなると、ストレスがコントロールできなくなるのです。
    「何を、どうするのか」以前に、いら立ちやストレスにつきあえる力があれば、落ち着いてよりよい判断ができます。

    ストレスにつきあう力は、その人の身体的健康、精神的健康、社会的健康が必要になります。
    WHO(世界保健機構)では、1993年にライフスキルとして以下の10のスキルを掲げています。

    ①自己認識 ②共感性 ③効果的コミュニケーションスキル
    ④対人関係スキル ⑤意志決定スキル ⑥問題解決スキル
    ⑦創造的思考 ⑧批判的思考 ⑨感情対処スキル ⑩ストレス対処スキル
    以上10の技術のことです。

    どれも心理・社会的変化に対する適応能力を高めるのに非常に重要な技術です。

    この10のライフスキルは互いに関連するので、以下の5つにまとめることができます。
    1.自己認識スキル(自己認識・共感性)
    2.意志決定スキル(意志決定・問題解決)
    3.コミュニケーションスキル(効果的コミュニケーション ・対人関係)
    4.目標設定スキル(創造的思考・批判的思考)
    5.ストレスマネジメントスキル(感情対処・ストレス対処)

    スキルを身につけるためには、心身の発達段階に合った方法で行うことが必要で
    幼児から成年した後も続けていくことでよりよいスキルを手に入れることができます。

    それでも
    大人であってもスキルが手に入らないわけではありません。
    (子どものころから訓練を受けていれば今のあなたがもっとよりよい生き方ができていたかもしれませんが)
    ライフスキルとは、その人が持っている知識、態度、価値観を実際に行動するときによりよく使うための能力です。

    ①自己認識  Self-awarenessr

    自己認識スキルは、自分への気づき、つまり自分自身の性格、長所、短所、願望、嫌なことを自分自身が認識できるライフスキルのことです。
    自己認識スキル を身につけると
    ・ 自分の長所を認識することができ、自信が持てるようになる。
    ・ 自分の短所を認識して、否定して終わりではなく、自分の能力に対して現実的な期待することができるようになる。

    これによって、思い込みではなく、自分の短所を知って、どうすれば改善できるのかと対策を考え、実行できるようになります。

    ②共感性 Empathy

    共感性は 自己認識と補い合うスキルですが、この共感性というスキルによって、まわりの人の意見、感情、立場、気持ちを肯定的に受け止めることができるようになります。
    それで外面だけではなく、内面から理解することができるようになります。

    共感性(Empathy)を身につけると
    ・他人をケアする
    ・いろいろな人々に対して心が広くなる
    ・他人を攻撃しなくなる
    ・自然に友達ができ、いままでよりも好かれるようになる

    共感性は自己認識なしには生まれません。自己認識と補い合っています。

    ③効果的コミュニケーションスキル
    (Effective Comunication Skills)

    効果的コミュニケーションスキルとは、人にコントロールされたり、しないライフスキルのことです。
    効果的なコミュニケーションを行うためには、受ける側の人は相手のメッセージに十分な注意を払う必要があります。

    効果的コミュニケーションスキルができると
    ・効果的で適切な言語的・非言語的コミュニケーションができるようになります
    ・積極的自己表現(アサーティブネス)・交渉(ネゴシエーション)ができるようになります。
    ・断ることができるようになります。
    ・内気さを克服できます。
    ・人の話をよく聞くようになります。

    ④対人関係スキル(Interpersonal Reiationship Skills)

    人と人との良い関係を作ったり、続けたりする人間関係を効果的にするスキルのことです。

    対人関係スキルがを身につくと
    ・協力しあう
    ・信頼して共同作業をする
    ・上手に人と付き合うための限界がわかる
    ・友達をつくる
    ・他人とのかかわりをつくったりやめたりできる
    ・家族とよい関係を作れる

    ⑤意志決定スキル(Decision Making Skills)

    意志決定スキルは、自分のことは自分で決めるスキルのことです。
    個人がある問題に対していくつかの選択肢の中から最良と考えられる1つをを判断して、選択するスキルです。

    意志決定スキルができると

    ・健康に対する選択と決定がもたらす結果の予測
    ・選択肢と選択権に影響する要因を認識し、それに基づいて積極的に意志決定する
    ・状況を正確に予測して意志決定する
    ・現実的な目標を設定する・計画を立て、自分の行動に責任をとる
    ・新しい状況に適応するためにあらたな選択、判断をして、意志決定をする場合

    ⑥問題解決スキル(Problem Solving Skills)
    私たちは日々さまざまな重要な問題に直面しますが、その時に問題をさばくスキルです。

    問題解決スキルを身につけていると、問題やその原因を見極め、何が起こったのかを正確に予測、推測、判断できるようになります。
    さらに問題が広がることを防止し、バランスよく判断、対策を打てるようになります。

    問題解決スキルを身につけると
    ・問題やその原因を見きわめ、何が起こったか正確に推測、判断できる
    ・助けを求めることができる
    ・衝突しないための歩み寄りができる
    ・問題が起きたときにまわりの人に助けてもらえる方法を考えられるようになる

    ⑦創造的思考(Creative Thinking)

    創造的思考スキルは、問題解決したりするときにどんな選択肢があるか、いろいろな原因を見つけだすことができるスキルです。
    また、経験しないことについても考えたりできるスキルです。

    創造的思考ができると
    ・ポジティブ思考
    ・自分から学ぶようになる(新しい知識を求める)
    ・自己表現が上達する
    ・選択肢を見分けることができる(意志決定のために)
    ・問題に対する新しい解決法を考えることができる

    ⑧批判的思考(クリティカル思考)(Criticai Thinking)

    批判的思考(クリティカル思考)とは、手に入れた知識や自分と他人の経験を客観的な方法で分析するスキルです。

    批判的思考ができると
    ・自分や世の中で起きていることに対して社会的文化的影響に気づくことができる
    ・まわりから受けているプレッシャーやメディアの影響を知ることはできる
    ・不平等・不公平・偏見を知ることができる
    ・自分の責任を理解することができる

    ⑨感情対処スキル(Coping with Emotions)

    感情対処スキルとは、自分やまわりの人の不安や喜怒哀楽の感情を知り、上手にコントロールできるスキルです。

    怒りや悲しみなどの感情にきちんと受け止めずに、自分任せにしてしまうと、酒、薬物乱用などに逃げるようになります。
    さらに慢性の病気にかかりやすくなります。

    次のようなメリットがあります
    ・自分自身や他人の気持ちに気づくことで、良いコミュニケーションを作り、続けることができる。
    ・気持ちと感じ方、考え方を上手に行動とをつなげることができる
    ・フラストレーションや怒り、退屈、悲しみ、恐怖、不安に上手にさばくことができる
    ・まわりの人への強い感情や行動に対応することができる

    ⑩ストレス対処(Coping with Stress)

    ストレス対処スキルは、日常生活でのストレス源が、どのように影響するのかを知り、ストレスのレベルを調整できるスキルで、緊張とストレスに対処する能力 のことです。
    ライフスタイルや物理的な環境を変えることで、ストレスの源を少なくすることができます。また避けようのないストレスに対しては、緊張が心身の健康問題に波及しないようにリラックスできる方法を学び探しだすライフスキルです。

    ストレス対処スキルは、感情対処スキルと補い合って、以下のことに効果があります。
    ・自分の力では変えることができない状況を収拾できるようになる
    ・困難な状況(喪失、拒絶、非難)に対処する方法を考え行動できる
    ・気持ちを奮い立たせる時に、アルコール、薬物などに頼らなくてもいいようになる
    ・プレッシャーの下で落ち着きを保つ
    ・人間関係、ビジネス、テストのストレスを上手に裁くようになる

  • 理解するとは#4 公的表現の方法

    ここまであえて「コミュニケーション」という言葉を使わなかったのは日本語での語感がもとの言葉とイメージがちがうからです。
    もともとの意味は「兵站線(へいたんせん)」のことです。「兵站」とは軍隊を支える補給などの裏方のことを言い、「兵站線」とは兵站を支えるしくみのことを言います。戦争の勝敗、つまり人の生き死にを決める大事な技術・しくみを指します。そこから、今使われているような意味が生まれてきたのです。communicationには人生の勝敗を決める道具としての語感があると思います。
    自分の人生を決める意味でのコミュニケーションに必要な技術の訓練は「話すことよりも読むこと」「読むよりも書くこと」が優先になります。話すことは一番精度が低いのでより精密なことを優先すればいいのです。だいたいスピーチでもきちんとしたければ原稿を書くものです。
    今の国語教育では自分が何を伝えるかよりも人の考えを読み解く方を優先しています。人の話をよく聞きなさいといいますが、いったいの何のために人の話を聞くのでしょうか、自分が主張するために人の話を聞けるようになることが本当に人の話を聞くことではないでしょうか。「正しい読み方?」というものがあり、その子が文を読む目的を持つことを二の次にして、正しい読み方を追求してきたことが国語教育の最大の害です。わかることを拒否するような文章を解読することが文章を読む能力を高めることではないのです。そんなひとりよがりの文章が通じるのは象牙の塔か、ふるい落としのための入学試験だけです。より高いレベルで書くことは書く力だけではなく、本当の意味での読む力を育てます。
    実際、大学入試問題では本文の内容がわからなくても正解を解答する技術があります。そんな試験で選抜してきた結果が現在の日本の幹部たちの非効率な仕事の仕方なのです。簡単なことをむずかしく書いて見栄をはり、それを読ませる時代は終わりました。

    書く技術の基本は「①言葉(概念)」を増やす、「②論理(すじみち)」、「③書く形」の訓練。さらに「④数言語(数学)」「⑤外国語」の学びでの上達の裏打ちです。私はこれらの訓練のためのプログラムを開発しています。受験のための日本語訓練ではなく、日本語能力を高めることでの受験対応、就業後の仕事を効率的に高い質で行う能力を身につけることを目指しています。

    ①言葉はまず観念として存在します。伝えるための道具としては精密な「概念」に高める必要があります。そのためには言葉の数を増やすだけではなく、言葉の「対比」「同義」「包括」といった訓練が必要になります。
    ②④⑤論理の基礎は「事実」と「推測」の違いから始まり、ユニット(単位)としての短文表現の練習をします。次に短文を文に構成する論理の展開(導出)の仕方に進みます。文が構成できるようになったら、今度は自分の文章が読まれるものとしてより精度の高い文にするための検討の技術を身につけます。そのときに「数言語(数学)」の能力が上達を助けてくれます。特に現代数学の基本である「集合と確率」という考え方は正確な文を書くときの手段になります。自分の姿は鏡でしか見えないように本当の日本語の姿は外国語を通してしか見えてきません。日本語の能力を広く高くするためには外国語の学びは大切なものです。
    ③公的表現の目的は文学作品を書くことではありません。私は教育や訓練の場で文学作品がいらないとは言いません。しかし、文学作品は共感を強制する手段でも、試験の問題に使うものでもありません。このようなことはむしろ作品の価値を低くするものだと思います。生徒教師であっても教える教えられるというかかわりではなく同じ読者として読むのが自然な読み方です。
    私が目指すのはお互いに主張する、意見を交わすための文章です。今までの研究の結果、フランス式の論文技術が一番その目的に合っているという結論になりました。足かけ5年ほどの研究で中高生・オトナのためにフランス式論文技術を日本語の性質に合わせ移植したトレーニング技術を開発しました。

  • 理解するとは#3 意思を伝える「方法」と「内容」

    まず、伝えるということは観念をコトバに託したキャッチボールをいいます。
    観念とは自分の頭の中にある思いです。それをコトバという枠で切り取って相手に投げます。すると受けとった相手はコトバの枠から自分の経験や知識を参考に自分なりに解読します。この繰り返しとなります。

    先にもいいましたが、日常生活で言葉が通じている理由は皮肉なことに言葉がいいかげんだからです。普段の生活ではなんとなく、なあなあでもお互いが納得すれば何の問題もないわけです。共通の経験がお互いの意思を読み取ります。コトバのキャッチボールは理解ではなく了解なのです。不都合が起きてはじめて問題になるのです。ところが、事が重大になるとごめんではすまなくなります。自分の思い込みを越えて伝える方法が必要になります。

    意思を伝える「方法」には次の二つがあります。
    a 論理的合理的なものを基礎にする
    b 感情でつながる

    aで、伝える正確さを上げるためには観念をより共通度が高い概念に高め、伝える形式を整えることが必要です。「観念」とはその人の思い込み(自分勝手であろうが、より広い立場であろうが)と考えてください。それに対して「概念」とは観念と比べて、より共通でより詳しくぶれが少なくなるように決められた考えを指します。
    共通の議論をするためには「概念」を身につける必要があります。そのために学びが必要なのです。

    b 感情に訴え共感の幅を広げる。これは同じ言葉・文化で生きている者同士であれば自然に起こることです。これを忖度(そんたく)と言います。(もともと「忖度」は相手の気持ちを推し量って思いやることです)でも、忖度は自然に起きるわけではありません。共通の感情を持つためには訓練がいります。昔は近所・親類の付き合いで教えるものでしたが、現在ではその習慣も減りました。そのため学校教育の大きな目的の一つになっています。特に国語教育の主流である「文学主義」(=文学作品を通して相手を思いやる練習をする)は忖度の練習と言ってもよいでしょう。

    さらに伝える「内容」として次の二つがあります。
    α 公的表現
    β 私的表現

    当然、公教育で優先して身につけるべきものは公的表現のはずです。「公」教育なのですから。
    今までの国語教育では公的表現の基礎は共感技術だと考えられてきました。そのため、自分の意思を他人に伝える技術が追求されることは置き去りにされてきました。
    相手に内容を伝えるためには、今ここでの説明だけではなく、背景にあるものの了解から始めないと話そのものが受け取れません。つまり、主張の根拠を示す訓練とそこから理屈を導く訓練が必要なのです。
    厳しく言えば他の国では、自分の考えをわからないのはわからないお前が悪いという発想で相手が屈服するまで主張することが当たり前になります。それに対して、日本では相手の気持ちをよむことで解決しようとするのです。
    お互いが主張を取り下げないから、ここで初めて本当の公的表現の必要が生まれます。
    これは人の平等とも深くかかわっているのです。たてまえだけでも人が平等であれば問題解決には、筋道での主張が必要になるのです。忖度には必ず上下関係が含まれます。

    日本の国語教育には私的表現と公的表現がちがうものと考え、公的表現の正確さを求める考えがありません。この分け方がないので感情の共有を理解と考え、理解し合えるという思い込み、言い換えれば思い込みの強制が起こります。
    「共感」「共通の生活」「共通のあり方」これが実用的な価値としてのこれまでの国語教育の到達点でした。しかし、これは「閉鎖的」「排他的」「形にはまった」「強制」「あいまいさ」といったような多くの問題点を生んでいます。問題点は外の人に対するものだけではなく、言語がうまく働かないことからくる作業の非効率でわれわれを苦しめています。「事務・実務の非効率」「長時間労働の原因」「日本の生産性の低さ」は日本語の実用言語技術が低いから起こっていることです。
    日本型「いじめ」も根は日本語(社会)環境にあると考えられます。欧米では子どものトラブルは暴力型が多いのですが、日本ではいやがらせ型が多いのです。(英文では日本で言う「いじめ」を指す言葉はないようです)暴力はいじめではなく暴力です。